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山﨑圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』社会人の教養あるいは学び直しにもおすすめ

一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 公立高校教師YouTuberが書いた

世界史は、時代の流れをストーリーとして掴んでおくことが大切

著者の山﨑圭一さんは、現役の公立高校教師としてYouTubeに世界史や日本史や地理などの社会科目の授業動画を公開して話題になった方です。現役公立高校教師が、大学受験を目指す高校生ら、それもどちらかというと歴史が苦手な生徒に向けて書いているという印象を受けました。

けれども本書は、大学受験生だけでなく、世界史の学び直しをしたり、教養を身に付けたりしたい社会人にもおすすめの世界史入門書です。
日本史であれば、小学校から繰り返し学び、あらすじぐらいは多くの方が知っていると思います。対して、世界史のあらすじを知っている方は少ないかもしれません。
私は、大学入試のセンター試験を日本史で受験しました。世界史も、高校卒業のための選択科目のひとつとして履修しましたが、大学受験科目ではなかったので、高校の一年間では単位を取れる程度の勉強しかしていません。その頃は、教科書と授業で教わったことを覚え、テストで点数を取ることが最優先でした。
世界史は、今日のようなグローバル時代には身に付けておきたい教養のひとつです。世の中や文化的なことを理解する上でも役に立つかもしれません。

歴史の勉強では、時代の流れをストーリーとして全体を掴んでおくことが大切です。本書は、すべてを数珠つなぎにしてひとつのストーリーになるように書かれています。かといって、高校の世界史で学ばなければならないことはたくさんあります。
ひとつのストーリーにするには、世界史を熟慮した上での工夫が必要です。どのような構成になっているかについては、本書から引用します。

最初にヨーロッパ、中東、インド、中国の4つの地域の歴史を個別に学んだあとに、大航海時代を通じて4つの地域が1つに合流。次に近代、現代を通じて、ヨーロッパ世界がアジアを中心とした世界に影響を強めていく過程を学ぶ

本書は、「ヨーロッパ」「中東」「インド」「中国」の4つの地域を「主役」にして展開していきます。本書では、地域、または王朝、国家などが「主役」であり文章の「主語」です。主役の変化を最小限に留め、その他の地域は脇役として登場させ、主役が別の地域に変わるときは、主役であった地域が脇役にまわります。
ただし本書では、世界の歴史をひとつの物語にするために、主役を4つの地域に絞っています。アフリカと東南アジア、朝鮮半島、日本などの地域は、脇役として登場するだけで大きく取り上げられていません。できる限り平易に記述するために、多くの用語とともに各国の文化史なども割愛されています。

それから本書では、年号や西暦などが使われていません。「文永の役・弘安の役」や「明治維新」など、用語として使われることはありますが、年代を示す表現は使われていません。
年号を用いないと、事件や人物の関係性、つながり、因果関係など、ストーリーがより際立ってきます。そして頭に残りやすいのです。
この事について山﨑圭一さんは、子どもの頃に読んだ昔話を例にしています。多くの方が昔話などを覚えているのは、日時や年号を使わない数珠つなぎにされたシンプルなストーリーだからです。世界史の授業や教科書に関しても、山﨑圭一さんは同様に考えたようです。
また、すべての知識を数珠つなぎに身に付けたあとであれば、年号も簡単に頭に入れることができるとも仰っています。私もその通りだと思います。

本書の章分けは次のようになっています。

序章 人類の出現・文明の誕生
第1章 ヨーロッパの歴史
第2章 中東の歴史
第3章 インドの歴史
第4章 中国の歴史
第5章 一体化する世界の時代
第6章 革命の時代
第7章 帝国主義と世界大戦の時代
第8章 近代の中東・インド
第9章 近代の中国
第10章 現代の世界

章分けを見ると、何となく本書のイメージが湧くと思います。第5章を境に、大きく前半と後半に分けられています。前半では「ヨーロッパ」「中東」「インド」「中国」の4つの地域の歴史を個別に学び、第5章で合流し、今度は「欧米」「中東・インド」「中国」に分け、最終章の第10章が現代の世界です。
すべてがひとつのストーリーになっているわけではありません。けれども数珠つなぎになっているので、年代に沿いながら、ひとつのストーリーとして世界史を学べます。

従来の教科書は、年代や地域があっちこっちに飛んでしまうことがありました。山﨑圭一さんは、それを一般的な教科書の問題点とし、本書では数珠つなぎに学べるように構成したのです。歴史は時代の流れを掴む必要があります。
年代と地域があっちこっちに飛ぶと、全体像が頭に浮かびにくくなり、分かりにくい教科書になってしまいます。それでは歴史の学習であるにもかかわらず、学習の中心が英単語の暗記のようになってしまいます。
山﨑圭一さんは、分かりにくいとされる一般的な高校世界史の教科書を使いながら、世界史が苦手な生徒を減らす手法を考えたようです。そして、YouTubeでの授業動画の公開を経て本書の執筆に至りました。

本書は、2018年に刊行された本です。私が世界史の勉強をしていた頃から、史学の研究は進み、学会では新しい研究成果が発表され、討論議論されてきたはずです。専門書を読むつもりはありませんでしたので、一般向けの通史として基本を押さえている本を探していたら、本書に辿り着きました。
本書の著者は、現役公立高校教師です。近年の情報を含めての学び直しができ、基本的な事柄を正しく書いているのではと思い、『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』(SBクリエイティブ, 2018年8月)と『一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書』(SBクリエイティブ, 2019年9月)の2冊を購入しました。

 

山﨑圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』SBクリエイティブ, 2018年8月