文学の嗜み

文学表現全体の総合的な研究

文章を書くことをもっと楽しむには

田中泰延氏の『読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術』(ダイヤモンド社, 2019年6月)という本を読んだ。

 

 

書類などの文書と、書きたい人がいて読みたい人がいる文章は違う。ネット上に溢れているのは文章。

田中泰延氏によれば、書きたい人がいて、読む人がいる文章のボリュームゾーンは「随筆」とのこと。ネット上で読まれている文章の9割は「随筆」とも、田中泰延氏は述べている。

田中泰延氏は、「随筆」を事象と心象が交わるところに生まれる文章と定義している。
「随筆」が事象と心象が交わる文章ということは、事象を中心にした文章も、心象を中心にした文章もある。
事象を中心にしたのが「報道」や「ルポルタージュ」であり、ジャーナリストや研究者は事象寄りのものを書く。
心象を中心にしたのが「創作」や「フィックション」で、小説家や詩人は心象よりのものを書く。
ネットメディアへ寄稿している一般的なライターは、「随筆」にあたる分野で文章を綴っている。

この本には、読み手など想定して書かなくていい、とある。
自分で読んで面白くなければ、書くこと自体が無駄ともある。

一般人が興味深い話を書こうとしても、読む人の人数は高が知れている。しかし、有名人が昼食のことを書いただけで、多くの人が読む。何が書いてあるかより、誰が書いたのかが重要。これが現実である。

本書には次のようなことも書かれている。
物書きの仕事は、調べることが9割以上。ライターの仕事は調べることから始まる。ライターの考えは、全体の1%以下でよい。残りの99%は、調べたファクトを文脈にして綴るという作業だ。1%以下を伝えるために、あとの99%が要る。

だとすると、関心の強いことでなければ、なかなかモチベーションは上がらない。

調べていることを並べれば、読む人が主役になれるという効果を生む。調べる際は、一次資料に当たらなければ話にならない。ネット情報は、また聞きのまた聞き。ムック本や新書では不十分。どこで調べるかというと、図書館。

どう書くかについては、起承転結でよいとのこと。随筆には、起承転結が効率よく使えるからだ。

田中泰延氏は、本の最後で、書くことは生き方の問題と述べている。自分が読みたくて、自分のために調べる。自分のために書いたものが、だれかの目に触れて、その人とつながる。