文学の嗜み

文学表現全体の総合的な研究

森田良行『助詞・助動詞の辞典』日本語における重要な役割

 

助詞・助動詞については、わかっているようで理解できていないことが多いのではないだろうか。日本語の助詞・助動詞について深く学びたいなら、森田良行氏の『助詞・助動詞の辞典』をお薦めしたい。助詞・助動詞に関する疑問を、この一冊で解決できそうな内容である。

一般の国語辞典でも、個別の意味なら列記している。しかし、類語との使い分けや、用例までは学べない。また、文法辞典は、活用形式や規則などが主である。それに対して、森田良行氏の『助詞・助動詞の辞典』は、意味や表現についても扱っている。

森田良行氏は、日本語について本書のプロローグで次のように述べている。

語彙に対して話者の把握認識の有り様を示す言葉を添えて、より複雑な内容の叙述形態へと発展させていく。

日本語は、助詞を添えながら話を進めていく表現形式。日本語の場合、種々の助詞を適宜添えることで、言いたいことを文形式として定着させる。助詞の順番や組み合わせにより、話の内容が変わる。
日本語と英語では、言語の性格が異なる。日本語は、英語のように構文規則によって順番に並べるだけでは成立しない。日本語の助詞は、表現内容を形成する際に、重要な働きをしている。

森田良行氏に言わせると、英語などは内容をドライに叙述する言語とのこと。英語などは一見論理的に見え、日本語は情的で論理性軽視に見えるかもしれない。
しかし日本語は、論理を曲げることなく、正確に叙述内容を伝えている。ゆえに、日本語は論理と感情の両面を合わせ持つ性格の言語であると。
助動詞に関しても同じだ。日本語は、まず客観的な叙述内容を述べる。そして、表現主体の受け止め方は、助動詞などを添え加えることで相手に伝える。

接続助詞に関する、森田良行氏の見解についても触れておく。情報内容を広げる場合、新たに文を起こし連文とする方法と、繋ぎ言葉により展開する方法とがある。前者が接続詞を使う方法で、後者が接続助詞を使う方法のこと。

いったん文を切り、改めて判断を加える接続詞による方法は、論理性寄りの印象を与える。対して接続助詞を使うと、どういった印象を与えるだろうか。森田良行氏の言葉を借りれば、表現意識の連続性といった情的な面の濃い表現となる。
接続詞を使う方法は、前件・後件の論理関係を示すことを重視する表現方式と言える。対して接続助詞を使う方法は、感情の流れに乗って話を展開させていく表現方式。
日本語の接続助詞のような展開は、他の外国語では見られてない。日本語には、相対的に主観的認識、情的な側面が見え隠れする。

日本人は、相手を意識して会話を進めることが多い。そのため、文の終わりだけでなく、文節の切れ目にまで、相手を意識した言葉が現れるのだ。森田良行氏は、こういった日本語の特徴を踏まえ、日本語表現の向上に役立つ『助詞・助動詞の辞典』を著した。

参考文献 森田良行『助詞・助動詞の辞典』東京堂出版,2007