文学の嗜み

文学表現全体の総合的な研究

村上春樹『職業としての小説家』35年間の作家生活について語った自伝的エッセイ

『職業としての小説家』は、村上春樹さんが書いた自伝的エッセイ。本書は出版社からの依頼で書き始めた文章ではない。少しずつ断片的に、テーマ別に書きためていたそうだ。
本書のあとがきで村上春樹さんは、結果的に「自伝的エッセイ」という扱いを受けることになりそうだ、と述べている。ただ、もともとそうなることを意識して書いたわけではない、とも。次のように書かれている。

僕としては、自分が小説家としてどのような道を、どのような思いをもってこれまで歩んできたかを、できるだけ具象的に、実際的に書き留めておきたいと思っただけだ。

 

本書の目次を見ると、第1回から第12回まで章分けされている。第何回と分けられているのは、講演原稿のような文章に統一したため。
人々を前にして語りかけるような文体で書いてみたら、すらすらと素直に書けたとのこと。親密な口調で語りかけるという設定である。
ただし最後の第12回だけは、現実の講演原稿として、実際の講演会において人前で語られた。2013年5月に行われた講演会である。

本書の前半部分の第1回から第6回までは、2013年から2015年にかけて文芸誌『MONKEY』に連載された。雑誌『MONKEY』は、英米文学翻訳家の柴田元幸さんが責任編集を務め、スイッチ・パブリッシングが発行している。
この時、村上春樹さんの方からス柴田元幸さんへ、連載を持ちかけたそうだ。そして村上春樹さんは、机の中に眠っていた原稿を渡した。
本書は、2015年9月にスイッチ・パブリッシングより単行本として刊行されたが、第7回から第11回は書下ろし収録という扱いとなった。第12回は、上述の通り講演原稿をもとにしているが、雑誌『考える人』2013年夏号(新潮社刊)に掲載されている。雑誌『考える人』は、生活文化総合誌であったが、2017年春号をもって休刊。
そして文庫本は2016年10月に新潮文庫より刊行された。

本書は、小説を書くときの参考になるだろうし、生き方のヒントも得られる。
村上春樹さんは、具体的なヒントを与えてくれたし、自分なりの方法を見つけることの大切さも教えてくれた。

百人の作家がいれば、百通りの小説の書き方がある

そのへんのことは、みなさんが各自見きわめて、適正に判断していただければと思う、とのこと。