文学の嗜み

文学表現全体の総合的な研究

百田尚樹『日本国紀』日本通史としての読み応えあり

 

百田尚樹氏の『日本国紀』(幻冬舎, 2018年11月)は、一般向けに書かれた文学的な日本通史。日本史の専門書や教養書として販売されているわけではない。もちろん学習参考書でもない。日本図書コードの分類コードはC0095。内容に関しての分類でも、日本史ではなく文学的な書籍としている。

日本通史を刊行する際は、各時代や分野の専門家で分担し、ひとりが編集者としてまとめるという方法をとることが多いらしいが、私はそういった書籍を求めていたわけではないので、本書に満足した。日本史の全体像を復習するような感覚で読んだ。

本書のように、ひとりの著者が執筆する場合は、作家としての力量と、これまでの読書量や教養などが問われるだろう。また協力者の存在も欠かせない。百田尚樹氏は、久野潤氏・江崎道朗氏・上島嘉郎氏・谷田川惣氏らの歴史学者・評論家・ジャーナリストに監修などを依頼した。

本書の日本図書コードの分類コードはC0095。つまり出版界の基準では「日本文学、評論、随筆、その他」に分類される。ちなみにC0020なら歴史総記でC0021なら日本歴史である。

分類コードはC0095であるが、帯には「日本通史の決定版!」とある。本書のような通史は、一本の線でつなぎ、全体をまとめてあるので、読後感がよい。
帯には「当代一のストーリーテラー」、「壮大なる叙事詩」という文言もある。確かに、歴史学者や歴史の教員らが書く通史とは、一味違う本になっている。

否定的な意見もあるようだが、学校の教科書や参考書から大きく逸脱したり定説を覆したりしているわけではなかった。記述内容の誤りを指摘する記事もあるが、私個人で真偽を確認するところまでは至っていない。
百田尚樹氏は、様々な説があることを明確にした上で自説を述べている。特に違和感はなかった。一般人が読む日本通史としての価値はあると思う。

どのような分野でも、専門家の意見が分かれたり、極端にかたよった意見であったりすることもある。その点、本書は分かりやすい日本通史であった。また国益にも関係する本書は、中高生向けや大学生向けとしてではなく、社会人向けとして読むべきであろう。

歴史上の人物についての評価が、これまでのイメージと多少ずれることがあり、明治維新あたりからは、著者の自説ではないかとも思われる記述もあったが、逆に言葉に力がこもっていた。得られる知識は多く、視野も広がる。印象深い記述も多い。

右翼的という意見もあるようだが、記述には説得力がある。朝日新聞の報道がきっかけとなった3つの国際問題などは、右翼とか左翼とかの問題ではないと思う。学校で学んだことやこれまで得られた情報と比較しても、違和感はなかった。