文学批評と研究

文学表現全体の総合的な研究

石田衣良『4TEEN』14歳のときの自分を振り返りたくなる連作短篇集

 

石田衣良さんの『4TEEN』は、2003年に新潮社から刊行された連作短篇集。石田衣良さんは、本書で第129回直木賞を受賞した。『小説新潮』に掲載された6篇と書下ろし2篇の8篇からなる。

基本的には中学生の青春や学校生活などに纏わる物語。爽快な文体が心地よい。そして各篇で起こる大きな出来事や事件は、様々なことを考えさせる。
いつの時代でも、悩みを抱え、思うように生きられないことに苦しむ人間がいる。病気や死という誰しもが抱くことであろう恐れや不安。自分一人だけが取り残される不安。
人生の苦悩は、家庭や学校や職場などの環境が影響し、自分一人だけでは解決できないかもしれない。だが、本作の4人の中学生は友人に恵まれ、人生を楽しみ、困難にも立ち向かう。

本作の主な舞台は東京都中央区月島。月島の中学2年の同級生4人組の物語である。彼らの名前は、ナオト、ダイ、ジュン、テツロー。そして彼らの家族、彼らが通う学校の教師や生徒が登場し、月島やちょっとした冒険先で、様々な年代の人々に出会う。
テツローとジュンは中クラスのマンションに住むサラリーマン家庭。ナオトの家庭は裕福で超高層マンションに住んでいる。そしてダイは路地の長屋に住む。
経済的な家庭環境は異なるが、彼らは一緒に登下校し、放課後や休日は一緒に遊び行動を共にするほど仲が良い。普通の14歳の少年ではあるが悩みもある。特にナオトの病気とダイの父親の家庭内暴力は深刻。
ジュンは勉強ができる秀才で、時には思い切った行動もする。テツローは、自分のことをごく平凡で平均的な中学生だと考えている。
テツローは、この物語の語り手でもある。「ぼく」という一人称で語られる。

なぜ設定を、中学2年生の14歳のときにしたのかについて、石田衣良さんは、文庫本のあとがきで述べている。結論からいうと、自分自身の十代の中で一番楽しかったのが、中学2年生であったとのこと。
高校時代は本ばかり読んで暗かったので、中学生がいいとなり、受験勉強が厳しい3年生でも、中学にまだ慣れていない1年生でもなく、楽しかった2年生にしたそうだ。

思い返せば、十代のときにも、色々な経験をした。中学生のときには、辛いこともあったが、運動部の部活と受験勉強を両立し、頑張ることができた。中学生のときには、本作にも出てくるような不良が校内にもいた。
高校は自由な校風の文武両道の進学校。多少、不良っぽい服装や髪型をしている生徒が何人かいる程度であった。だが、通学途中でヤンキーや暴走族を見かけることはあった。高校では、部活に入らなかった。
大学受験は、取り敢えず文系の学部を目指した。国立大学を受験するも、結局、地方にある無名の私立大学に進んだ。この頃を振り返ると、楽しい思い出よりも、どうしてもやり直したいという気持ちの方が強まってしまう。年齢を重ねても、自分の周りや世の中では同じようなことが繰り返されている気もする。

石田衣良さんは僕より一回りほど年上。時代感覚や十代の頃の記憶は共感できることが多い。ただ石田衣良さんは東京出身で、僕は地方で生まれ育った。中学生4人で風俗店へ行くといような発想は中々でてこない。今ではある程度の情報は入るが、僕が中学生の頃は皆無にひとしかった。