文学の嗜み

文学表現全体の総合的な研究

文学

馳星周『少年と犬』多聞と名付けられた犬と、旅先で出会った人々の話

馳星周さんの『少年と犬』は、第163回直木賞受賞作である。連作短編として、娯楽小説誌「オール讀物」に掲載された6話からなる。多聞と名付けられた犬の旅が、ひとつの物語として完結する。

誉田哲也『背中の蜘蛛』国家による監視社会を題材にした警察小説

誉田哲也さんの長編小説『背中の蜘蛛』は、国家による監視社会を題材にした警察小説。第162回直木賞の候補作。本作は、元CIA職員が暴露した、アメリカ合衆国連邦政府による個人情報監視の実態を題材にしている。

乗代雄介『旅する練習』完成度の高いメタ構造、喪失感が残る結末

乗代雄介さんの『旅する練習』は、第34回三島賞受賞作。第164回芥川賞の候補作でもある。風景描写によるメタフィクションなど、構造の完成度の高さに評価が集まった模様。

佐藤究『テスカトリポカ』直木賞・山本周五郎賞W受賞のクライムノベル

佐藤究さんの長編小説『テスカトリポカ』。直木三十五賞・山本周五郎賞W受賞作。これは17年ぶり史上2度目の快挙である。壮大な物語を完成させるために、相当の資料を読み込み、言葉で描写することに妥協しなかったことが窺える。

橋本陽介『物語論 基礎と応用』形式を重視する研究による作品の解明

文学研究には、「何が書かれているのか」という内容を重視する方法と、「どのように書かれているのか」という形式を重視する方法とがある。

百田尚樹『日本国紀』日本通史としての読み応えあり

百田尚樹氏の『日本国紀』は、一般向けに書かれた文学的な日本通史。分かりやすくまとめてあり、日本史の全体像を把握できる。専門家の監修もあり、読む価値がある。

村田沙耶香『コンビニ人間』少し怖いがすかっとするユーモア小説

村田沙耶香さんの『コンビニ人間』は、第155回芥川賞受賞作。少し怖いがすかっとするユーモア小説です。男性はグロテスクな部分に注目する方も多いが、女性はすかっとするという方が多いらしい。どちらにしても面白い小説です。

森見登美彦『夜行』夢幻の境をさまよう物語

森見登美彦さんの小説『夜行』。出版元の情報を見ると、怪談と青春とファンタジーの3語がキーワードになっていた。学生時代からの仲間が登場人物であり、京都の宿で皆が奇妙な話を語る。全体的にはファンタジー小説としての印象が強く残る。

桜木紫乃『ホテルローヤル』父親がかつて経営し実在した施設

桜木紫乃さんの連作短編集『ホテルローヤル』。世間の常識から外れていたり、官能的だったりしますが、ほのぼのとした場面も多く、心温まる話もあります。

門井慶喜『銀河鉄道の父』父親でもある気鋭作家が描く父子の情、家族愛

門井慶喜さんの長篇小説『銀河鉄道の父』。宮沢賢治の生涯や家族についての物語が、賢治の父・宮沢政次郎の視線を通して描かれています。家族のぬくもりや父と息子の関係を描いた物語です。

島本理生『ファーストラヴ』普通の初恋ではない、歪められた記憶

島本理生さんの長篇小説『ファーストラヴ』。普通の初恋ではない、歪められた記憶。女性や弱者に対する社会の理不尽さに目を向けさせる小説でした。

辻村深月『鍵のない夢を見る』町の事件をテーマにした5篇、結論を読者に委ねる

辻村深月さんの短篇集『鍵のない夢を見る』。 町の事件を扱う5篇が収録されています。結論を出してしまわずに、読者に委ねる書き方を意識したとのこと。第147回直木賞受賞作です。

西條奈加『心淋し川』様々な事情を抱え、江戸の一角にある古びた長屋に住む人々

西條奈加さんの短編集『心淋し川』。時代小説の連作短編集であり、全六編が収められています。描かれているのは、様々な事情を抱え、江戸の一角にある古びた長屋に住む人々のこと。

ケン・リュウ 『紙の動物園』知性と叙情の作家と評される中国系アメリカ人

中国系アメリカ人、ケン・リュウ氏の短篇小説「紙の動物園」「もののあはれ」「円弧(アーク)」などについて。「紙の動物園」は、2012年度のヒューゴー賞・ネビュラ賞・世界幻想文学大賞の各短篇部門を受賞。「円弧」は、日本で映画化された作品。

村上春樹さんの作品についての記事一覧

村上春樹さんの作品について書いた記事の一覧です。このブログには、村上春樹さんの長篇小説14作品のほか、短篇小説集やエッセイについての記事があります。

村上春樹『カンガルー日和』リリカルな作風の掌編集

村上春樹さんの短編集『カンガルー日和』は1983年9月に平凡社より刊行されました。上梓した短編集の中では2作品目にあたります。掌編小説集としては初の作品集です。

村上春樹『中国行きのスロウ・ボート』1983年刊行の初の短編集

短編集『中国行きのスロウ・ボート』は、村上春樹さんの初めての短編集として、1983年5月に中央公論社(現・中央公論新社)より刊行されました。本書には、表題作の「中国行きのスロウ・ボート」のほか、雑誌に発表された年代順に、7編が収められています。

村上春樹『女のいない男たち』タイトルどおりのモチーフの短編集

村上春樹さんの『女のいない男たち』は、2014年に文藝春秋から刊行された短編集です。この場合の「いない」は、「去られたり、失ったりして、いない」という意味合いで使われています。あるいは、去られようとしている男たちです。

村上春樹『職業としての小説家』35年間の作家生活について語った自伝的エッセイ

村上春樹『職業としての小説家』35年間の作家生活について語った自伝的エッセイ。出版社からの依頼で書き始めた文章ではない。少しずつ断片的に、テーマ別に書きためていたそうだ。

横山秀夫『陰の季節』D県警シリーズの第1弾、松本清張賞受賞の表題作を含む4編を所収

横山秀夫さんの『陰の季節』。D県警シリーズの第1弾。松本清張賞受賞の表題作を含む4編を所収。本書では、主に警察の管理部門に属する人々の葛藤が描かれています。

神護かずみ『ノワールをまとう女』裏稼業が生業のヒロインによるハードボイルド的なミステリー小説

神護かずみさんの『ノワールをまとう女』。裏稼業が生業のヒロインによるハードボイルド的なミステリー小説です。

三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』女性作家による男性的な男の友情物語

三浦しをんさんの『まほろ駅前多田便利軒』。第135回直木賞受賞作。女性作家による男性的な男の友情物語。

東野圭吾『祈りの幕が下りる時』複雑に絡み合ういくつもの謎は加賀恭一郎の母にも繋がっていた

東野圭吾さんの『祈りの幕が下りる時』。複雑に絡み合ういくつもの謎は、加賀恭一郎の母にも繋がっていた。

誉田哲也『ノーマンズランド』長かった20年という歳月、願いが叶わぬことを知ったとき

誉田哲也さんの『ノーマンズランド』。長かった20年という歳月、願いが叶わぬことを知ったとき。

東野圭吾『沈黙のパレード』共犯者の誰も知らなかった隠れた真実

東野圭吾さんの『沈黙のパレード』。共犯者の誰も知らなかった隠れた真実。

綾辻行人『十角館の殺人』熱烈なファンの多い本格ミステリ

綾辻行人さんの『十角館の殺人』。熱烈なファンの多い本格ミステリ。いわゆる叙述トリックを用いたミステリ。冒頭を読み始めただけで、作者の筆力を感じ、本作への期待感が高まる。

宇佐見りん『推し、燃ゆ』主人公には早く立ち直って欲しい

宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』。本作の序盤には、アイドルとのかかわり方は十人十色であることに触れ、どのような人がいるのかを、分析的に語る文章がある。大抵の人はどれかにあてはまると思う。主人公には早く立ち直って欲しい。

石田衣良『4TEEN』14歳のときの自分を振り返りたくなる連作短篇集

石田衣良さんの『4TEEN』は、2003年に新潮社から刊行された連作短篇集。石田衣良さんは、本書で第129回直木賞を受賞した。『小説新潮』に掲載された6篇と書下ろし2篇の8篇からなる。

柴崎友香『春の庭』古いアパートでの出会いと懐かし記憶を辿る物語

柴崎友香さんの中篇『春の庭』は、第151回芥川賞受賞作。柴崎友香さんは、本作の出発点が実体験から想像を膨らませたものであることを、インタビューで明かしています。

柳美里『家族シネマ』それぞれの場面が面白い小説、主人公・素美の家族と仕事の話

柳美里さんの短篇「家族シネマ」は、第116回芥川賞受賞作。物語のそれぞれの場面に、小説としての面白さを強く感じた。芥川賞の選評では、文学的才能を感じるといった言葉が、数名の選考委員から出ている。